Wind Cage
Yuka Shigihara Solo Exhibition

2025.3.15(SAT)ー3.24(MON)12:00-19:00 
〒107-0062 東京都港区南青山3丁目14−3


展示ステートメント

アトリエの傍には小さな川が流れていて、天気のいい日にはよく川沿いの遊歩道を歩く。道端に植えられた木々が光のしま模様をつくり、行く先を照らしては遠ざかる。空を横切る鳥のシルエットや、波打つ水面に反射する陽の光、抜けるような青空に枝を伸ばす裸木、風を受けてさらさらとそよぐ葦などが、現れては過ぎ去ってゆく。風景は留まることなく流れ、眼差しからすり抜ける。そして、それゆえに、風が心の中を通り抜けるのを感じる。

アトリエに戻り、ソファに腰掛ける頃には、それらの風景はすでに遥か遠いものになっている。かつて出会い、別れてしまった誰かのように、その顔貌も、声も、匂いも、正しく思い出せば出そうとするほど遠のいてゆく。私は目の前の作業を進める。膠を引き、地塗りをし、油絵具を乗せたり拭き取ったりする。手を動かしていると、外で両足を交互に繰り出しているときのように、時折何かが心を掠めてゆく。そして、ある瞬間、キャンバスの向こうに風を感じる。その風はどこからやってきたのだろうか。私はキャンバスから距離を取り、眺め、いくらか調整し、それを絵画と呼ぶことに決める。

風は空気の流れであり、止まることはない。風は流れているし、私たちもまた流れている。あの光、あの音、あの温度。それはどこにも位置することはないし、どこにでも位置することができる。だからこそ、私は私の中のずっと遠くにある風景を見つけようとする。形にならず解けてゆくとしても、その存在だけは確かであり、そのために私は絵を描く。 

 私たちは風を感じることができる。
 絵画はただそこにある。

 ──風の檻について Mar. 14th, 2025

作家略歴

神奈川県生まれ

2022年 武蔵野美術大学造形学部油絵学科油絵専攻 卒業

2024年 東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻 修了




そのタイム
長谷川博子 個展 立体と絵の展示

2025.3.2(SUN)ー3.12(WED)12:00-19:00 
〒107-0062 東京都港区南青山3丁目14−3


展示ステイトメント

それぞれの所にそれぞれの時間があるようだ。と何度も浮かんでくる日々でした。
普段は東京に住んでいますが、今回は主に三重で制作をしました。家が竹林に囲まれていて緑が近い制作期間でした。そこで作った立体作品と油絵の展示をします。

作家略歴
長谷川博子
1993年三重県生まれ。2021年東京芸術大学大学院美術研究科を修了。

主な展示
2024  「DAY」Gallery Blue 3143(二人展/東京)
2024 「透明な部屋 : つかみ取れない遠い今」MJK Gallery(二人展/東京)
2023「Hiroko Hasegawa exhibition」Gallery Blue 3143(個展/東京)

わたしがカモメになった日
小島平莉 個展

The day I Became a Seagull
Heiri Kojima Solo Exhibition

2025.2.21(FRI)ー2.28(FRI)12:00-19:00 *Last day until 17:00
〒107-0062 東京都港区南青山3丁目14−3


展示ステートメント
私は、周囲の身近な他者との間で起こった出来事から着想を得て、研究制作を進めています。今回
の展示では、以前から取り上げている、「逃避行について」を起点に、文様を描いた作品群を発表し
ます。「逃げること」は、日常生活ではたいていの場合、ネガティブな事として取り上げられますが、私
は「生きるために死から遠ざかる行為」だと考え、肯定的に捉えています。文様が持つ他の文化に柔
軟に溶け込む性質に注目し、場所から場所へと軽やかに逃亡したいという自身の願いと重ね、作品
内に用います。

【作家略歴】
小島平莉
2001年、神奈川県生まれ。多摩美術大学大学院テキスタイルデザイン領域在籍中。
【主な受賞歴】
2024年 「SICF25」 EXHIBITION部門 スパイラル奨励賞
2023年 制作・展示支援プログラム Artists in FAS 2023 選出

【主な活動】
2024年 二人展『アイランドエッジ』(KOGANEI ART SPOT/東京)
2024年 「SICF25」 EXHIBITION部門 (スパイラルホール/東京)
2023年 制作・展示支援プログラム Artists in FAS 2023(藤沢市アートスペース/神奈川県)
2023年 東京DESIGN FESTA Vol.58 ライブペインティング(東京ビッグサイト)
2023年 「KHiO×TAU国際共同教育プロジェクトconnecting wool」(ノルウェー大使館、オスロ国立
美術館)
2023年 「多摩美術大学テキスタイルデザイン専攻卒業制作展Baumkuchen」(スパイラルガーデン
/東京)
2023年 「多摩美術大学卒業制作優秀作品選抜展」(多摩美術大学八王子キャンパス/東京)
2022年 「Glasgow School of Art Year 3 Fashion & Textile showcase」(スコットランド・グラスゴー)

あすこここ  本多周 個展

2025.2.4(TUE)ー2.15(SAT)12:00-18:00 open everyday
〒107-0062 東京都港区南青山3丁目14−3 1F


展示ステートメント


「あすこここ」とは妖怪の名である。

江戸時代に描かれた百鬼夜行絵巻(松井文庫)に登場し、黒雲の中で複数の妖怪の顔が見え隠れしている姿で描かれている。

絵と名前しかないためどういった妖怪なのか詳しくはわからないが、言葉の意味は「あそこにも、ここにも」ということらしい。一見奇妙な言葉にも思える「あすこ」と「ここ」は、単に黒雲の中に現れた様々な顔の様子をそのまま表現したものなのかもしれない。百鬼夜行絵巻(松井文庫)では一体の妖怪につき一つの名前が与えられている。故に、妖怪の名であることに間違いはないが、この「あすこここ」という言葉は、神出鬼没である妖怪という存在そのものの特性をよく表したものにも思えてくる。

 

私はよく散歩をするのだが、その道中で次々に出会う風景に幼い頃から慣れ親しんだ妖怪の存在を重ね合わせることがある。「あの木の形が面白い」「あの建物の影の落ち方が不気味だ」といった具合に、良いと思った風景や何かあると思った風景は、写真を撮って現像しアルバムに収めている。写真を見返してやっぱり良いなと思ったものには、たとえ、何気ない風景であっても何か怪しげなものの存在が見え隠れし、絵に起こした時に何かが現れ出るようなそんな気がしている。

そうして採集した絵は私にとっての妖怪図鑑であるし、私はそれを眺めてはあそこにもここにもいる妖怪の気配を楽しんでいる。


作家略歴


1997年 埼玉県生まれ

2022年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻 卒業

2024年 東京藝術大学院美術研究科 油画技法材料研究室 修了

 

主なグループ展

2024年 二人展「幽界通信」CASHI、東京

2024年 第5回「絵画の筑波賞」展 アーロンギャラリー、東京

2024年 第 72 回 東京藝術大学卒業・修了作品展 東京藝術大学、東京

2022年 第 70 回 東京藝術大学卒業・修了作品展 東京藝術大学、東京

2020年 二人展「もうてん」 zakura、東京

2019年 Group exhibition “Portrait” YUGA Gallery、東京

モッフンフェスティボー

2025.1.24(FRI)ー1.26(SUN)12:00-18:00 
〒107-0062 東京都港区南青山3丁目14−3 1F.2F


テーマは「モフモフ」です。
ハンドメイドやイラストレーター、陶芸家など7名によるモフモフの祭典です。
観に来てくれた方が楽しんでもらえるように、アート、雑貨、フォトスポットなどご用意しました。
展示作品やグッズは購入できます。全てお持ち帰りいただけます。
ペット同伴可ですのでお気軽にご来場いただけたら嬉しいです。

メンバー紹介や詳細は公式サイトで日々更新していますのでよろしくお願いします。
https://www.instagram.com/moffu.n/

以下、各作家のステイトメントです。
愛くるしいモフモフたち。モフモフに対する想いはそれぞれです。

<東久世>
動物なら何でも描きますが今回は「家族やパートナーとしての動物」を意識して描きました。
そのせいか普段より眼差しがほんわかしました。
額縁だけでなく、ペットの名札や看板のイメージから、素朴な木材も素材に使ってみました。
気軽に絵を飾ってもらえたらなと思っています。

<家鴨窯>
イキモノが好きで作陶している陶動物作家です。
特に眼差しと骨格を重んじて形作っています。
お写真からのモデル作陶のオーダーを心よりお待ちしています。

<esk>
「モッフンファッションショー」
チョビひげのチビねこクロちゃんが、モッフモフな着ぐるみを着て一世一代のファッションショーを開催中!
モフモフがモフモフを纏う、これ以上ないモフモフをご堪能ください。
原画、グッズをご用意しています。

<大沢かずみ>
わんこやにゃんこをモフモフとした時に
受け取る事ができるお布団のようなやさしいあたたかさ。
そんな気持ちを思い出して握ってホッとするようなモフモフ、
身につけてホッとするようなモフモフを作りました。

<ちぎらはるな>
"I’ll love you forever, now and always."
をテーマにワンコやニャンコの絵を描きました。

ワンコやニャンコたちと通じ合う想いは、永遠に続いていくんだろうな。
一緒にいる時はもちろん、お別れした後もずっと。
そんなことを考えながら、いろいろなワンコやニャンコを描きました。
絵のサイズは10cm×10cmアクリル絵の具です。
あと、昭和レトロのケーキをイメージしたドールも少しですが作りました。
これは完全に私の趣味全開です笑 あの懐かしい街のケーキ屋さんにあった
とぼけた動物のケーキが大好きです。
お近くにおいでの際はぜひお散歩がてら見にきてください!

<mochi>
カラフルで楽しくなるようなグッズのハンドメイド作家です。
世の中のワンちゃんネコちゃんがみんなカラフルになるといいなという
思いを込めて作っております。

<吉泉ゆう子>
去年からイベントなどでたくさんのワンコたちと接する機会を多くいただきました。
飼い主のみなさんの強い愛情や、ワンコたちのと信頼関係を改めて認識しました。
そしてその「存在」の大きさ。
存在はワンコだけでなくときにはぬいぐるみや花やモノだったり様々です。
子どもの頃からの記憶だったり、日常に潜むものだったり。
そういう誰かの存在の一部になれたらいいなぁとか、観て触れて笑顔になって欲しい気持ちをこめて
作品を作りました。


武蔵野学芸専門学校 油絵・日本画六人展

2025.1.15(WED)ー1.19(SUN)13:00-20:00
*Last day until 16:00 
〒107-0062 東京都港区南青山3丁目14−3


展示ステートメント

武蔵野市に所在する美術の専門学校 武蔵野学芸専門学校で油絵・日本画を学ぶ6人によるグ 

ループ展を開催します。 

絵画を本格的に学び始めて1、2年という彼らは、日々の学びや挑戦を通じて自分の感性を磨 

き、表現の幅を広げています。本展では、それぞれが向き合うテーマや技法への模索を通じて生 

まれた、多様な作品を展示します。 

6人の作品には、世界に対する瑞々しい感性や新鮮な視点が反映され、制作への力強いエネル 

ギーと純粋な情熱が現れています。 

初々しいながらも、それぞれ作家性を備えた作品たちは、素材・テーマ・表現方法との対話や格 

闘の跡が見え隠れし、制作という行為の奥深さや豊かさをあらためて思い出させてくれます。 

ぜひ、若きアーティストたちの挑戦と成長の一端をご覧ください。 


作家略歴 

テイカブン DING JIAWEN 

私は高校生の時に写真部に所属していました。友人や風景、植物を撮影することが好きでした 

が、多くの風景や夢の中で見る光景や自分の想像するイメージはカメラでは撮影できません。そ 

のため私は絵でそれらを表現しています。 

2004年 中国杭州市生まれ 

2022年 日本に留学する 

2025年武蔵野学芸専門学校卒業見込 


チョウ ミホウ ZHANG MEIFANG 

水面をモチーフとした日常の生活の美しさを描いています。日常の中で当たり前のように存在し 

ている水は、意識すると水中の光や、水面のゆらめきなど美しさがあります。このように、普段は 

特に意識しないものの美しさを絵で表現していきたいと考えています。 

2000年 中国河南省生まれ 

2022年 日本武蔵野学芸専門学校入学 

2025年 武蔵野美術大学入学予定 


高橋さらさ sarasa TAKAHASHI 

数年前数ヶ月前数分前の自分と、今現在進み続けている自分の、解離した感覚、未だ追いつい 

てこない手触りと追い上げてくる感情に 

苛まれているなかで自分の外殻をたもつため、 

自分自身の相反する感情や行動、言動、思考や、ふわっとした空気中に浮いているようなものを 

表現し、今、しっくりきている形でその場所に現れたものを拾い集めて配置するようなイメージの 

中で制作しています。 

2024年 バンタンデザイン研究所卒業 

2024年 武蔵野学芸専門学校 在籍 

【展示歴】 

2024 二人展「幽か」デザインフェスタギャラリー原宿 

Instagram @sarasatakahashi 


米村慶次朗 keijiro YONEMURA 

ここにあえてこの色をのせたらどうなるんだろうと試みながら描いています。題材は自分の中の 

かっこいいと思うものを選んでます。今回は夏目漱石を題材に選び、彼から漂う風格というか気 

品を絵にしたいと思いました。割と好奇心のままに描いています。 

2003年 東京都生まれ 

2024年 武蔵野学芸専門学校 在籍 


榎本莉奈 rina ENOMOTO 

外出先で出会った風景の中で、心揺さぶれたもの、その瞬間にしか見ることのできない空の色、 

海の色にスポットを当てて色鮮やかに表現しています。 

2005年 神奈川県相模原市生まれ 

2024年 聖パウロ学園高等学校(通信制)卒業 

武蔵野学芸専門学校国際コミュニケーション学科ファイン専攻油絵コース 1年在籍 


中谷来夢 raim NAKAYA 

五感のときめきに相反して感じる苦しみを描きました。 

2024年 武蔵野学芸専門学校 在籍



’taidi people 

WAKO Solo Exhibition

2025.1.9(THU)ー1.13(MON)12:00-19:00
*Last day until 17:00 
〒107-0062 東京都港区南青山3丁目14−3,2f


展示ステートメント
タイディ・ピープルと読む。 

これは、”怠惰なひとたち”を意味する造語で、 

わたしが日頃から使っている言葉だ。 

 

「あなた、なかなかタイディだねえ」とか 

「今ちょっとタイディ」とか、 そんな感じで使う。 

 

わたしがついつい気になってしまう人たちのことであり、 

あの頃のわたしたちでもあり、 

いつもどこで、なにをしているか分からぬ、 あの人のことでもある。 

 

ちなみに“Tidy”という同じ発音の単語にすると、 

ちゃんとしているとか、きちんとしているとか、 

対岸にある言葉だと知り、なんだか、さらに気に入っている。



作家略歴
 
WAKO 

1994年生まれ。神奈川県藤野町育ち、東京在住。2020年東京大学・大学院教育学研究科修士課程修了。2023年美学校修了。COVID-19のパンデミックのなかで制作を開始。毎日のすぐそこに転がっている事物から絵を立ち上げ、ノーリーズンに描いている。 

Instagram:@wako__47

Softer Toys
ハンス・チュウ 個展

2024.12.20(FRI)ー12.25(SUN)12:00-19:00
open everyday
〒107-0062 東京都港区南青山3丁目14−3,2f


展示ステートメント
都市の街角に散見される庭や植物、道端で捨てられた物、日常生活にあるオブジェクトから影響を受け、物作りの価値を研究している。
無数にあるオブジェクトには、機能あるもの/ないもの、必要とされるもの/されないものが交じり合い、共存する生活に必要とされなくなった物は廃棄や放置される。
私はそんな大量生産工業品に手で作る単純な焼き物パーツを用いて、その輪郭をまろやかにしていく。
 
陶ならではの性質と社会的に定められた用途をもつ規格品の組み合わせで、新たな造形をつくり、作品として価値を授けたい。
 

作家略歴
 
HANS CHEW
ハンス チュウ

異質さ、温かさ、不思議さといったテーマに、陶芸を中心に様々な媒体で作品を発表。
粘土を触覚的なメディアとして捉え、両手を使って考える行為は、自分の意識を概念化して伝える能力と同じくらい重要であると考え制作を行っている。
 
1997​シンガポール生まれ
2023​多摩美術大学工芸学科陶芸専攻卒業 
2024​シンガポール芸術大学大学院在学中

I think  vol. 3 / TENSOKU
福井 敬貴 個展

2024.12.15(SUN)ー12.22(SUN)13:00-20:00
open everyday
〒107-0062 東京都港区南青山3丁目14−3


展示ステートメント
  
系統樹をモチーフとした枝の周りに多様性を象徴する標本群を配置する「 I think 」シリーズ、昆虫の生体時の姿を再現した 「立体展足標本」を多数展示販売。新刊「昆虫展足の世界 TENSOKU -Insect preparation-」(STRAIGHT)の発売を記念して撮影に使用した標本の展示、書籍類の販売なども行います。

作家略歴

1994年福島県出身。2017
年多摩美術大学美術学部彫刻学科卒業。2019年同大学院修士課程彫刻専攻修了。幼い頃からちいさな生き物に興味を持って育つ。
主に昆虫標本を用いた作品や甲虫をモチーフとした立体作品を制作する他、標本の制作依頼や展示会、書籍等への協力、3DCGモデルの造形・原型監修など分野を横断した活動を行っている。
主な活動実績として21_21 DESIGN SIGHT「虫展 -デザインのお手本-」にて企画協力、資料提供、WS実施の他、会場内すべての昆虫標本を担当。『 BRUTUS No. 952 珍奇昆虫Bizarre Insects Handbook 』、『 BRUTUS No. 1012 珍奇昆虫Bizarre Insects Handbook 2 』(マガジンハウス) 、にて企画協力等。

著書(共著)として
『 とんでもない甲虫 』(2019, 幻冬舎)
『世界で一番美しい甲虫図鑑』(2023, 誠文堂新光社)
『昆虫展足の世界 TENSOKU 
-Insect preparation- 』(2024, STRAIGHT)


X (Twitter) : @fukuinsect

隙樹耶
五十嵐大地
村井翔

2024.11.27(Wed)ー12.8(Sun)13:00-20:00
open everyday
〒107-0062 東京都港区南青山3丁目14−3


展示ステートメント
  
「水さしの役に立つところは水を注ぎ込むことのできる空所にあって、その形状や製品のいかんには存しない。虚はすべてのものを含有するから万能である。虚においてのみ運動が可能となる。」
岡倉覚三 『茶の本』より (老子について言及)

盆栽師の村井さんとは2年前に外苑前のバーで知り合った。そのお店には美術作品や工芸品が置かれ、作家の手製の食器が多く扱われている。提供される食器は、店主のその日の気分と客に合わせて選び、訪れる毎に新鮮な気づきを与える。私は作品を置いてもらったことをきっかけに足を運ぶ様になり、そこで村井さんと出会った。

村井さんとの会話を通して、彼が目指す盆栽とは、「和」を単なる記号として象徴する物ではなく、間、動き、空間と樹木の相互関係を通じて日本の美的感覚を体現させることに強い目的意識を持つものだと理解した。作品を見せて頂いた際には、樹が本来持つ荒々しさ、儚さなどの特徴を尊重しつつ、時に破壊を伴いながらも”和”を手掛かりに繋ぎ止めようと構成する実直さに好奇心を刺激された。盆栽を始めとする東洋文化の思想体系には、禅や「空(くう)」と言った、一つの真理を探求する方向性があると私は捉えているのだが、剪定された枝からは時代感覚や世情から見落とされた視点を掘り起こそうとする姿勢も見る事が出来た。

私の制作プロセスでは、モチーフの複製とセッティング、撮影、画像データのコラージュの工程を経た後、絵画を描いている。モチーフには西洋絵画で扱われた果物や食器、布を用いる事が多く、図像とコンポジションの相互関係を探求している。制作の過程では、萎れや空虚さ、静謐さと言った、東洋的なナラティブを織り込む意識を持ち、イメージを選択・構成している。

物を置くと間が生じ、影を塗る事で光が視覚される。曲げられた枝は生命と時間のダイナミクスを描写する。
私と村井さんの扱うメディアは、平面構成と空間表現、西洋由来の油彩と東洋文化と言うように、ある種対照的な形式を取るが、間、陰影、様相の変化を通じて抽象的な概念の輪郭を探ろうとする側面に共通性がある。
メディアは異なるが、「伝統」「形態」「間」と言った問題意識を共有する作品。それらを用いて一つの場を構成し、現代に生きる我々が無意識下に持つ趣と、伝統的な型式との関係性を考察する為、この展覧会を構想した。

  「茶室はある個人的趣味に適するように建てらるべきだということは、芸術における最も重要な     
原理を実行することである。芸術が充分に味わわれるためにはその同時代の生活に合っていなけ     ればならぬ。それは後世の要求を無視せよというのではなくて、現在をなおいっそう楽しむことを努むべきだというのである。」
岡倉覚三 『茶の本』より

「数寄屋様式」とは、小屋の在り方を表す語であり、厳密に定められた建築様式ではない。数寄屋の原義は「好き家」であるが、「数奇家」「空き家」など、茶人それぞれの思想に基づいて当て字がされる事もある。詩趣を宿すための仮りの住み家としての「好き家」、あるいは美的必要を満たす為に置かれる物が一切無い「空き家」としてのあり方など、多様な解釈が存在する。
展覧会のタイトル「隙樹耶」は、こうした数寄屋建築の概念から着想を得た。

五十嵐大地

作家略歴

五十嵐大地 
1996年 東京生まれ。
2022年に東京藝術大学にて絵画科修士課程を修了。現在は東京都を拠点に活動。
主に、モチーフの複製とセッティング、撮影、画像データのコラージュのプロセスを経た後、絵画空間を構成する。近年の制作では西洋の静物画で扱われた果物や食器、布をモチーフに取り入れている。主な個展に、「The State of Things」(Gallery Blue 3143、東京、2023年)、「Sweet Spiral Garden」(biscuit gallery 、東京、2022年)、「gjallarhorn」(biscuit gallery、東京、2021年)。主なグループ展に、「人物と静物」(ギャラリー小柳、2024年)、「或る絵肌一物語るマチエール」(日本橋三越本館美術サロン、2022年)、第6の予言 The 6th prophecy -The first sentence-」(REAL by ArtSticker、KITTE丸の内 、2021年)など。

村井翔
2017 暁星高校卒業

2022 青山学院大学法学部卒業

2022 春花園に入門

ミホリ トモヒサ 個展
Tomohisa MIHORI Solo Exhibition

2024.11.15(Fri)ー11.24(Sun)12:00-19:00
open everyday
〒107-0062 東京都港区南青山3丁目14−3 2F


展示ステートメント
ミホリは近年、人間を含めた循環する森羅万象、広義の自然物やその動きをモチーフに、時間や空間、光、波など、基本的な物理の法則を引用し、微細な動きや微細な音を発するインスタレーションを中心に作品を発表している。
自身を含め人々のもつBIASに興味を持ち、自然が持つ予測不可能な要素を探求するミホリは、特定の解釈を拒むような、穏やかで控えめなひとつの風景のような作品制作を試みている。
心臓や胃の動きのように自身の意思で制御不能で制御不要な動き、また、エラーや当初の考えとは異なるモノ、それらは自身の限界を超えることでもあり、また、鑑賞者にとっても、各々に多種多様な解釈が可能な作品となるのでは?と考えている。

作家略歴
2024年
9月 個展 GALERIE SOL(東京)
7~8月 グループ展(野外展示)我孫子アートな散歩市(我孫子市・千葉)
2~3月 個展 トキ・アート・スペース(東京)

2023年
7~8月 グループ展 -庭と窓- nohako(東京)
2~3月 個展 トキ・アート・スペース(東京)

2022年
10月 個展 art gallery & Legion  セレクション2022(東京)
1月 個展 トキ・アート・スペース 新春企画(東京)

2021年
2~3月 個展 トキ・アート・スペース(東京)
11月 グループ展 PLIUG-2展 MUSEE F(東京)

2020年
9月 個展 トキ・アート・スペース(東京)
3~4月 個展 The White(東京)
2月 グループ展 WALD ART STUDIO(福岡)

2019年
10月 個展 The White(東京)
6月 個展 トキ・アート・スペース(東京)
5月 個展 ART TRACE GALLERY(東京)

2018年
10月 個展 The White(東京)
7月 個展 トキ・アート・スペース(東京)
4~5月 個展 丹沢アートフェスティバル
田中現代美術研究所(秦野・神奈川)

2017年
9~10月 個展 The White(東京)

2016年
7月 個展 トキ・アート・スペース(東京)

2015年
9~10月 個展 The White(東京)

2014年
12月 個展 The White(東京)

2013年
7月 グループ展 PLIUG展 MUSEE F(東京)


GITAI ART UNION/擬態美術協会名義で20年近く制作活動。他、幾つかの個人名義で活動。
ミホリ トモヒサ名義では、2013年よりインスタレーションを中心に活動。

滔々と
檀上仁美 個展 〈うつわ群青堂〉

2024.11.9(Sat)ー11.24(Sun)13:00-20:00
Closed on Friday
〒107-0062 東京都港区南青山3丁目14−3 1F


〈ステートメント〉

滔々と、釉薬が川の流れのように自然と流れ、その“景色”が不自然にならないように、作っている。 


陶芸は「焼きが八割」と師匠に言われたのを覚えている。どれだけ試行錯誤しても、人の力は少しだけであとは自然の力に頼っている。

いちばん最後を自分の手で終えられない、手から離れ1250℃という人間の手の及ばないところで完成する。そんな素材は他になかなか無い。それが陶芸の難しいところであり面白いところだと思う。 


陶芸は技術というより経験則の世界だと感じる。最初からひとつのものを完璧に、ではなく何回も何回も作って試して失敗して、ようやくその中から素晴らしいものに出会える。長く続ければその確率が上がるだけ。

陶という素材はなかなか一回では成功させてくれない。 

だからこそずっと続けているのかもしれない。


〈作家略歴〉

大阪府出身 2012 大阪芸術大学工芸学科陶芸コース 卒業

大学卒業後、福岡県小石原村 高取焼鬼丸雪山窯元へ弟子入り、その後上京し関東で作家活動。


2016.11 個展「檀上仁美うつわ展」スタジオ35分(新井薬師前)

2020.10 POPUP「URAWA ROOMS」伊勢丹(浦和)

2022.12 企画展「大フリースタイル陶芸展」亀戸アートセンター(亀戸)

2023.2 三人展「陶と暮らす」KiKi北千住(北千住)

2023.6 個展「銘々」Gallery Blue3143(表参道)

2024.4 二人展 広瀬良二×檀上仁美「しなやかに硬く、仄かだ」KiKi北千住(北千住)